FM-TOWNSをアピールするのに最もよく使われたソフト
フラクタルなエンジン、だからフラクタルエンジン! シグノシスのロゴ。 微妙にシックでカッコいい。


フラクタルエンジン・デモ

富士通(開発:シグノシス) FM-TOWNS


『フラクタルエンジン・デモ』はFM-TONWSというマシンの潜在能力の高さをまざまざと見せつけてくれたソフトです。
このソフトが登場したのはFM-TONWSが登場したばかりの時期、確か1989年頃だったと思います。
TOWNSというソフトは、元々マルチメディア的な戦略を展開するのが目的のパソコンだったので、ビジネス的な要素の強いPS-98シリーズとはちがった面を強く押し出していました。
CPUに(当時では)高速なi386シリーズを搭載、画像を大量に扱う事の出来るCD-ROMドライブ標準装備、16色がメインだった時代に3万2千色もの色数を表示できるグラフィック機能、FM音源とPCM音源の搭載、グラフィカルで『MS-DOS』よりも分かりやすいOS『TOWNS OS』、今のWEBページのようなコンテンツ作成をこの時代から早くも実現していたマルチメディアエディタ『TOWNS GEAR』など、かなりアピール度満点なマシンでした。 (まあといっても、欠点も少なくなく、擬似スプライト機能が弱い、CDのアクセスが遅い、BIOSがゲームに向いてない、といった問題点もありましたが)
ムービーその1、プラネットサイド。 戦闘機が飛行物体を撃ち落します。 飛行物体登場シーン。 こいつら何モンなんでしょうか。
戦闘機発信…もとい、発進! 飛行物体空を行く。

しかしながら、いくらすごい機能を搭載したマシンでも、その機能を活かしたソフトがなければ、そのマシンがどれほどすごい事が出来るのかという事を消費者に理解させるのは難しいものです。 例えば新しいゲームマシンが出た時に、そのマシンの機能を最大限に使ったソフトなどが出なかったら、性能は良くてもあまり売れないように。
で、そんなTOWNSに対する最高の宣伝ソフトとなったのが、この『フラクタルエンジン・デモ』です。
これがパイロットの勇姿だ! SFなヘルメットですな。 コックピット画面も映し出されます。 計器類の演出が細かい
飛行物体を追いかける戦闘機。 待てコノヤロー 目標接近、レーダー表示。 撃墜せよ!

はっきりいって、すごいソフトでした
『デモ』と名前がついているように、このソフトはゲームではなく、ムービーのみのソフトです。
元々このソフトは製品として出たものではなく、展示用のプロモーション用ソフトとして販売店にのみ配布されていたものでした。
で、それが後日一つの製品としてリリースされたというわけです。
内容は非常に単純で、ただひたすら『戦闘機と未確認飛行物体の戦い』、『宇宙を舞台にした戦闘』、『二足歩行兵器がターゲットにバルカン砲を打ち込む』という3種類のムービーが延々と流れるだけのモノでした。 プレイヤーが操作する事は出来ず、わるくいうなら、映像垂れ流し状態のソフトともいえました。
しかし、このソフト、おそらくFM-TOWNS全ソフトの中で最も売れたソフトの内の一つです。
ではなぜ、元々展示用のデモ配布品だったものが、製品として出て、そしてそれほど売れたのか?
それは、そのデモで流れている映像が、当時はあまりに衝撃的だったから
おそらく、その頃のパソコン(PC-9801など)を知っている人ならば、一度はパソコンショップなどで流れているこのデモを見た事があるはずです。 そして、その映像に衝撃を受けた事がある思います。
そこには、コンピュータグラフィックスの持つ衝撃、そしてコンピュータグラフィックスの持つ可能性、というのがありました。
画面内に映し出される、秒間数十フレームもの滑らかな動画。 リアルな造形のオブジェクト達。 そして見るものの目を奪うような迫力のある戦闘シーン。
このソフトの出た1989年頃はといえば、パソコン上でのコンピュータグラフィックスといえば、基本的にほとんどの場合、ただの静止画、一枚絵でした。それも色数はたったの16色で、アニメーションすると言ってもせいぜい数コマ程度。 いってしまえば、リアルさとはまだまだかけ離れたレベルのモノだったのです。 したがって、映像だけで語るような作品、というのは全く考えられませんでした。
しかし、このソフトはその常識を見事に打ち砕きました。 セリフやメッセージの類は一切なく、映像だけで、まるでハリウッド映画のようなSFX映像が、これでもかとばかりにモニターの中で派手に展開されていたのです。
その映像も、データのロードなどで静止する事などまったくなく、CD-ROM(しかも1倍速)から大量のデータを随時読みつづけながら次々に展開されていく。 
そこには『FM-TOWNS』というハードの能力の高さと可能性を見事なまでに見せていました。
実際当時のほとんどのTOWNSを扱っていたパソコンショップでは、このデモを流していたくらいですから。
今でこそコンピュータグラフィックスで製作された秒間数十フレームものムービーといえばもはや当たり前の技術で、プレイステーションといった家庭用ゲーム機ですらも実現されてるほど一般化されてますが、しかしこのソフトが登場したのは今から1989年。 ゲームはというと、ファミコンやPCエンジン、メガドライブが主力だった時代です。
そんな時代に、『スターウォーズ』のような大迫力で美しいSFX映像をまるで映画のように映せるソフトウェアやハードウェアが、かつてあったでしょうか? そしてその映像を十数分もの間途切れ無く展開できるソフトがあったでしょうか?
このソフトは、そんなコンピュータグラフィックスで実現できる『夢』というモノを実現してくれたものであり、そして、FM-TOWNSというパソコンはそれを実現できる可能性を見せてくれたマシンだったと思います。
だから、このソフトはデモ映像のみでありながら製品化されたのであり、また同時に全ソフトの中でも1、2を争うほど売れたのだと思います。
熱先探知システム作動! コンディションは全てベスト、いける!
熱戦をとらえた!ロックオンせよ! ちょこまかと動き回る飛行物体。 このドッグファイトが熱い。

このソフトのタイトルである『フラクタルエンジン』ですが、これは本来はグラフィック描画エンジンの事です。
詳しいハナシはそれ系のページを見てもらうとして、フラクタルエンジンとは、まあ簡単に言えば『フラクタル理論』という理論を応用して、簡単な計算式で無限に複雑な形状を表現する事が可能になるというグラフィック描画エンジンの事です。
フラクタルとは、ミクロに見てもマクロに見ても同じ形状をしている、『自己相似性』と呼ばれる性質を持っている図形の事です。 フラクタルの図形はどこまで拡大しても同じ形状が繰り返し現れるというのが特徴であり、コンピュータグラフィックスの分野では、海岸線や雲、森林のような自然界の複雑な形態の描画や、画像の圧縮などに応用されているそうです。
で、このソフト内での砂漠や山岳の映像などはこのフラクタルエンジンという手法を利用して製作されたものなので、タイトルにもなりました。
といってもそれだけではなく、インパクトの強い爆発シーンなどは手書きで作成されたそうです。 すごい凝り様。 日本のソフトでいうなら、メタルスラッグの描き込みのような感じですか。
撃ちまくれェェェ!ズガガガガ……!! ヒット、ヒット、ヒット、ヒット、ヒット!
やった!撃墜! ズガガガガーン!!と大爆発。 これより帰還する。

さて、デモ映像のみのソフトとしては脅威的な売上をたたき出したこの『フラクタルエンジン・デモ』ですが、当然その映像技術は、これから出てくるソフトに対する期待を膨らませるものとなりました。
そしてその後に、人間の体内を探索する『マイクロコズム』、様々な惑星で空中戦を展開する『スカベンジャー4』、モーフィングムービーをふんだんに盛り込んだ『メガモーフ』といったソフトがリリースされました。 もちろん、映像のスゴさは折り紙付だったのはいうまでもありません。
だがしかし、悲しいかな、シグノシスというメーカーのサガというか特徴というか、どのゲームも映像はすばらしいわりに、ゲームとしての完成度は大して高くなかったのが非常に残念でした。 富士通の担当者などは、スカベンジャー4を『これは現在の世界最高のCGだと思う』とまでいっていたのに。
一度、富士通の担当者が日本のシューティングゲームをかき集めて英国のシグノシス社に行き、シューティングゲームの面白さを開発者達にわからせようとした、というエピソードがあります。 確かにスカベンジャー4などは自機に残機設定があったり、特殊武器があったりなど、日本のシューティングゲームを彷彿とさせる部分がありました。
が、しかし最終的には、それは結局実を結ばなかったみたいです。 どれもバランスは悪く、映像を考慮せず純粋な一本のシューティングゲームとしてみた場合、お世辞にもいい出来のゲームとはいえませんでした。
結局最終的には、FM-TOWNSの夢を実現するソフトともいうべきこのシリーズ、それ以降は大して注目されないまま、終わることになりました。
原因は、先ほどあげたようにゲームとしての出来が首を傾げたくなるようなものだったのも一因かもしれません。
がしかし、その他にも、デモだけでどんなゲームよりも人気を博した『フラクタルエンジン・デモ』の衝撃の映像から、わずか数年の間(おおよそプレイステーションやWindowsが出る頃まで)に、コンピュータグラフィックを活用することも、TOWNSの驚異的なスペックも、ごくあたり前のものとなってしまい、そしてDVDの普及により、フルサイズのムービーも今ではもう当たり前のものとなってしまったという、コンピュータ技術の進歩の早さも関係しているのだと思われます。
コンピュータ技術の進歩が早いというのは、技術が進歩するという面からすれば歓迎すべき事ですが、しかし新しい技術を開発しても数年もすればもうそれは古いものになってしまうという、非常に刹那的な面も併せ持っているなあと、このソフトを思い返すたびに感じますね。
ああ、『フラクタルエンジン』シリーズよ、永遠なれ……。

パイロットの勇姿。 イカス! 場面変わって次は第2のシーン、宇宙での戦闘。
画面が暗くてよくわからないでしょうが、宇宙船が飛行してます。 小惑星付近を通過。 光の処理がすばらしい。
ドバァッと大爆発。 爆発は男のロマンだ。 宇宙戦闘機、スタンバイ。
発進3秒前……2・・・・・・1・・・・・・0!! テイクオフ!!
ある宇宙船内の様子。 暗くてわかりづらいが、戦闘機が飛び交ってるのよ。 巨大千間の周囲で繰り広げられる戦闘機達の小競り合い。 静止画だと見づらいですな。
どこかの惑星状にて、高速で飛ぶ小型宇宙船。 レーザー砲発射!
ターゲットはあの戦車だ!ブッ壊れろォォ!! 負けじと戦車も応戦。 でも残念な事に、数秒後にこの戦車は大破。
アイサイト使用! 敵はドコだ〜 パイロットの勇姿。 光の加減か、かなりカッコよく写ってます。
それに比べてこっちはモノクロなもんだから、ちょっと落ちるか 作業場のような感じ。 宇宙服着た人間が感じ出てます。
ドック内を飛行する小型艇。 サテライトキャノン発射!
見事、命中! 爆発! サイト越しに、楕円型宇宙船の通過を確認
一秒後にこのサテライト、大爆発します。 複雑な地形。 これを簡潔に計算して表示させるのが、フラクタルエンジン。
意味もなく回転している宇宙服着た人間。 本当に意味もなく回転してます。
地表の攻撃目標を定めているシーン。 ピコピコと作動しているデータ表示が雰囲気満点。 第3のシーン、二足歩行メカによるターゲット破壊。
眠ってます、いわゆる電源OFF状態。 電源が入ったのか、ウィィィーンと重厚な音が鳴り出す。
キュピーン! メカが起動した時に目が光るのはお約束の定番演出。 ターゲットロックオン!
キュィィィィーンとガンバレルが回転! 今思ったんですが、ロボコップのED-209に似てますな。 ファイアー!!アット、ウィル!!
ズガガガガガ…!!ターゲットが粉みじんになっていく!!


2001年6月7日


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