中学、高校編:
こんな柔道部だった!
ここではK学校の柔道部(中学、高校)の、立地的、環境的、特徴的な部分などを語っていきます。
これに関しては、多分、立地的、環境的な面に関しては他の学校の柔道部に比べてかなり特殊な感じだったと思います、ホントに。
そこは貧乏学校
私の通ってたK中学高校は、一応私立の学校ではありましたが、しかし学力レベルはぼちぼちといったところで、そして学費もあまり高くない学校でした。
生徒数も中高合わせて1500人程度とそう多くなく、はっきりいうなら貧乏な学校。
比較的田舎の方にある学校だったので、立地的な条件もその要因の一つだったと思います。
周囲を森や山などの自然に囲まれているせいか、学校の規模は小さく、グラウンドは狭い。
中学の校舎なんて完全な木造建物で、しかもこれが築何十年も経ってるのでボロボロ。 床は常に真っ黒な砂だらけで汚く、それがもはや染み込んでいるといってもいいほどなので、掃除してもきれいにならない。 また壁の柱なんて腐って変形してる部分なんかありました。 例えるなら、何年も手入れされず放置されている山小屋のクオリティ、といえばわかりやすいでしょうか。
校舎内は歩くたびにギシギシきしむし、雨が降るとそこらじゅうで雨漏りするのは当たり前。
一応、高校の方の校舎は後で建て直された(といっても私がいた頃から何十年も前の事だけど)ため、中学の校舎と違って鉄筋コンクリートで作られててしっかりした建物でしたが、しかし自然に囲まれてるので、やはり校舎内は中学のそれと同様に汚いし砂埃だらけでした。 もちろん虫なんかもしょっちゅう。
黒い汚い砂がすぐたまるような汚い環境なので、専用の上履きといったものもなく、校舎内は土足が基本。 というか下駄箱自体がありませんでした。
もちろん、教室内も完全に土足。
おかげで制服がとにかく汚れやすいったらありゃしなかったものです。 ちょっと地面に制服をこすると汚れが付着してたし。 身だしなみに気を使う人でなくとも、制服のホコリなどを取るエチケットブラシは必須でした。
とにかくそんな汚くしょぼい貧乏学校だったたので、当然学内設備もまるで充実しておらず、普通の学校ではあって当たり前な設備、道具などの多くは、ここでは無いのが当たり前でした。
詳しくは後述しますが、とにかくあれも無いこれも無いと、ないない尽くしといってもいいほどだったものです。
当然部活用施設も貧弱な学校だった
とまあ、かような貧乏学校だったためか、もちろん部活に関する環境もぜんぜん整っていませんでした。
満足いくグラウンドや設備などは無く、そもそも専用の更衣室すらない。 もちろんロッカーなんて気の利いたものも無い。
当然、部活用の専用部室などもまるで充実してませんでした。
部室自体が超絶に狭い部屋だったためか、部室はほぼ物置としてしか使えず、加えて部室の建物はグラウンドに隣接してて後ろは雑木林という環境なのもあってか、ここでも土足が基本で汚いのが当たり前。 部活用の砂汚れで汚すぎて更衣室として使えようはずもありませんでした。
そのため、学生たちは体育の着替えのみならず、部活の着替えですらも、教室で行なっていました。
サッカー部もラグビー部もバスケ部も、みな同じ教室で着替える。 つまり体育の時間や放課後になると、あっというまに教室が部室に早変わりと。 でも教室は土足だから着替えるのに苦労したんですよねえ。 特にズボンを脱ぐときには気をつけないとすぐすそが地面に触れて汚れてしまうし。 小学校ならまだしも、中学高校でこれだからなんとも。
これは女子についても同様なため、体育の時間や部活の時間になると隣り合った教室が男子用、女子用の更衣室として個別に使われるようになっていました。 体育の時間や放課後になると、男子はさっさと出て行け、女子はさっさと出て行け、といわれたりいわれなかったり。
そのため、例えば男子の場合、自分の教室が女子用の更衣室として使われる場合、忘れ物などをしたらもう取りに戻れなくなる事もしばしば。 取りに戻る場合は誰か他の女子に頼むしかないという。
一応、みんな出払った後でこっそり教室に入るという手段も使えましたが、しかし基本的に更衣室として使われるようになった後に入るのはご法度で、もし入ったのが見付かったら理由はどうあれノゾキ扱い、変態扱いされてしまうのは必至。 なので迂闊には入れず、女子用の更衣室と化した後はその教室にはもう入れない、あきらめるしかない。
そのため忘れ物をしても次の日まで待たなければならなかったりなど、けっこう不便な目にあった学生も多くいました。
グラウンドも共用
部室と更衣室だけでも不便なものでしたが、それ以上に厳しかったのが、グラウンド。
前述したように、K中学とK高校は、校舎が別々にあるという部分以外はほとんど中学も高校も同じ施設内にあるひとつの学校といってもいいようなもので、運動場やら学内の設備といったものは、基本的に全て共用されていました。
そのためか、まあ何というか、不便な事この上なく、他の学校の環境や設備を見るたびにうらやましいと思ってたものです。
その最たる部分が、グラウンド。
K学校には、サッカー場がかろうじて一面分確保できる程度のメイングラウンドと、その端に小さいテニス場が一面分、そして中学校舎裏の目立たない山肌の場所に一面分のバレーコート一面程度の広さの小グラウンドがあっただけなので、運動部にとってはとにかく不便でしょうがなかったです。
はっきりというなら、全ての運動部が同時に練習をするのはムリだったと。 加えてK学校では中学と高校が共用しているため、さらに不便さアップ。
一つの部活が独占できるグラウンドといえばテニス場しかなく、ここだけが高校テニス部(中学にはテニス部は無い)専用で、それ以外のグラウンドはみな交代で使用しなければならない。
校舎裏のバレー部用のコートは、中学バレー部と高校バレー部が交代で使用。
メイングラウンドにいたっては、この一面で中学サッカー部、高校サッカー部、高校ラグビー部が共用しなければならないという。 なお他に陸上部もありましたが、人数が少なく、またグランドの端や外を走ればいいので問題はなかったようです。
とまあこんな環境の中では当然、一度に同時使用は出来ないので、どの部がいつ使うかを決めておき、交代で使うことになります。
この日は中学サッカー部、次の日は高校サッカー部、その次の日は高校ラグビー部などなど。 場合によっては時間を決めて何時から何時までこの部が使える、なんて事も。
もちろん、グラウンドを使えない日は使えないなりに、別の練習やトレーニングをする必要がありました。
例えば中等部のサッカー部が練習をする日は、高等部のサッカー部とラグビー部はグラウンドが使えないので外を走ったり山を走ったりなど、走りをメインとしたトレーニングを主にしたり、もしくはグラウンドの隅のほうでリフティングなどこまごましたトレーニングをしたり。
中学サッカー部と高校サッカー部が同じグラウンドを使用するだけでも不便なのに、そしてそれにラグビー部も加わるから厳しいことこの上ない。
試合が近づいてきても実戦的な練習がろくに出来ず、試合前なのにひたすらランニングばかり、なんて光景もしばしば。
どの部も少しでも長く、少しでも多くグラウンドを使いたいので、対立や衝突する事もよくあったものです。
しかしながら一つの部だけ特別視するわけにもいかず、基本的にはどの部活も運動場を使えるのは2、3日に一回、もしくは一時間だけ、30分だけなど、かなり制限された時間内のみという。
おかげでうちの学校では、外を走ったり山を走ったりなどの基礎体力鍛錬系のトレーニングをひたすら行なう部活がやたらに多く、部員達の走っている姿がそこかしこで見られたものです。
幸い、学校の近くには山があったので、そこを走るコースにする事も多く、そのためかうちの学校の運動部は全体的に足腰が強いって特徴があったものです。
グラウンドや部室だけでもこの不便さですから、他の部分に関してもやっぱり不便さはテンコ盛りでした。
まともな保健室は無いし、道具は充実してないし、プールなんて無い(もちろん水泳部も無い)し、部費は自腹だし、ETC…。
一般的に、学校の運動部は文化部などに比べて優遇されて予算も多く出るといわれているらしいですが、この学校ではとてもそうは思えませんでしたよ。 というか文化部も運動部も環境の不便さは似たような感じでしたし。
そして柔道部の部室はというと…?
上記のように、K学校はとにかく狭く小さい学校だったため、もちろん例に漏れず、柔道部もそのあおりを受けていました。
はっきりといってしまうなら、他の部と同様、K学校の柔道部部室(練習場もしくは道場とも言う)は、設備としてみた場合、どう贔屓目に見てもいい環境とはいえなかったと。
私は合同練習や試合などで今まで15箇所ほどの中学、高校の柔道部練習場を訪れた事がありますが、しかしどの学校の練習場も一目見ただけで『うらやましい』『こんないいところで練習してるのか!?』と思えてしまうほどの恵まれた環境でしたからねえ。
つまりは、私の学校はそれだけしょぼくれた環境だったという事です。
多分、全国に存在する柔道部の練習設備環境ランキングをつけるのなら、まず間違いなく相当な下位クラスにランクインするのは確実でしょう。
そもそも他校との合同練習どころか、通常の練習ですら満足に行えないくらいの広さと設備でしたし。
当然、試合なんてもってのほか。 狭いのでまともな試合なんて絶対不可能。
練習試合を申し込まれても、部室では試合するのは無理なので、必ずこちらから出向かなければならないと、そんな状況でした。
ただ一つだけ利点があったとすれば、他の部と違って柔道部はこの広い道場が練習場兼部室だったので、更衣室に関してはまったく無問題だった、という事ですか。
他の連中が教室を更衣室にしてて教室の出入りなど色々と不便な思いをしているのを尻目に、柔道部員は道場で悠々と着替えれたものです。
これは何も部活の時間に限った事ではなく、体育の時間でも同様。
柔道部だった私達は、道場を部活の時のみならず体育の時にも更衣室として使っていたので、まったく気兼ねせず着替えが出来たものです。
道場で着替えて、制服もそこに置いておき、そして体育に出席。
柔道部ということでいつでも自由に出入りできるので、存分に更衣室として使用してました。 まあ場所が校舎の端で教室からちょっと遠いという不便さはありましたが…。
他にも、体育用のジャージの保管場所としても使っていました。
教室のように人の出入りが激しくない分……というか柔道部以外はまず誰も出入りしない場所なので、盗難などの心配がほとんどなく、こっちのほうが遥かに便利でした。 ただ道場の管理が雑なので、道場内でたまに知らない間にごみと一緒に捨てられたり、保管場所が悪かったらカビ生えたりすることはあったけど。
と、そんな更衣室としては至極便利極まりない立地として使われていた柔道部部室でしたが、では柔道部の柔道をするための部室、練習場としての環境はどうだったかというと、どうひいき目に見ても、恵まれているとはいえない環境でした。 運動部と同じように、専用の道場とはいえ、中学柔道部、高校柔道日が共用で使っていたので、やはりある程度のローテーションを組んだりする必要があったりもしましたし。 また内部設計も悪かったものですし。
目立たず地味にその道場はあった
K学校の柔道部で特徴だったのが、まず何より、立地がものすごく地味な場所だった!という部分です。
K学校の柔道部の部室(兼更衣室)は、『柔道部物語』や『帯をギュッとね』といった柔道マンガで出てくるような、いかにも柔道部の部室!というような雰囲気漂う独立した一つの建物として存在している場所ではなく、高校校舎の1階の一番端の部屋にありました。
つまりこの学校の柔道部室は、元々柔道部の練習場としてあらかじめ作られた場所ではなく、校舎の一番端の空き部屋だった場所に柔道用の畳を敷いて無理矢理に部室兼道場として作られた場所だった、というわけです。
このように、空き部屋を道場として改造し道場にしているという立地条件の柔道部は、何もK学校だけのことではなく、他の学校でもそれなりに存在すると思います。 私自身も今までに何ヶ所かで見たことありますし。
とはいえ、他の学校の場合、専用の道場ではなく空き部屋を使いまわした場所であっても、それでもその部屋が広かったり立地的にいい場所だったりするので、別に専用に立てられた柔道場では無いからといっても、特に不便な所はないものです。
しかしながら、K学校柔道部室はまるでそういった条件を満たしておらず、使い回し部屋、無理矢理改造部屋の悪影響がもろに出ていて、とても快適とはいえない場所、というか明らかに不便な場所だったのが大きな問題でした。
その不便さのうちの一つが、一行目でも書いた、目立たない場所だった、ということ。
これがもう、本当に目立たない場所。
一般的には、学校校舎の1階端の部屋というのは特に目立たないわけでも無い普通な場所に見えるかもしれませんが、しかしこの学校ではその常識がまかり通らない。
K学校の高校校舎は、一階に職員室など事務系の部屋があり、教室は二階と三階にあるという設計でした。
つまり一階フロアはすべて教員室や生徒指導室や校長室といった部屋のみで構成されており、この場所は普通、先生と一部の役員生徒以外はほとんど立ち寄らない場所だった、ともいえるわけです。
もちろん、教員室などがあるので生徒がまったく来ないという事は無いのですが、しかし柔道部の部室は教員室や生徒指導室を通りすぎて更に奥まった場所まで行く必要があり、ついでに言うと、柔道部の先には教師用の宿直室しかない構造だったので、よほどのことがない限り、普通に生活している学生が柔道部の部室前まで来る機会はまず100%無いようになっていました。
おまけに、この学校の校舎の入り口は学生用と来客用で別れていて、来客は一階正面入り口(もちろんこの入り口は柔道部のある場所とはまったく反対側)から入り、普通の高等部の学生達は校舎側にある坂道を登って二階もしくは三階の側面入り口から入って直接教室に向かうようになっていました。 そのため、校舎一階に生徒が立ち寄ったり通ったりする機会はことさら少ないという。
このように、柔道部の部室は必然的に非常に目立たない存在となっていたもので、自分から柔道部室に行こうとでもしない限り、まず柔道部の部室の中や練習風景はおろか入り口を見ることすら無いものでした。
そもそもその入り口も常に扉が閉まっているので中は見えないし、また窓も普通の方向からは見えない位置に面しているので、これまた意識的に除こうとでもしない限り、中を謎来見ることは出来ない。
その結果としてか、中には柔道部の存在自体知らない学生なんかもいたほどです。
特に中学などは、高校とは別の校舎になっていることから、高校の校舎に行く事自体珍しいことになるので、高校校舎の中でも更に端にあって目立たない柔道部の部室の存在なんて、部員でも無い限りはまず知らないものでした。
『え、うちに柔道部ってあったの?』みたいな。
まあでも、クラブ紹介などがあるのでさすがに柔道部の存在をまったく知らない学生がいるというのは言い過ぎかもしれませんが、しかし場所のあまりの目立たなさのため、柔道部がどこで練習しているのか知らない、つまり柔道部の練習場がどこにあるか知らないという学生(特に女子や中等部の学生)は実際にけっこういたようです。
それに、体育の授業で柔道がなかった(というか環境が環境なので絶対ムリだった)というのも、柔道の無知名度さをさらに引き立たせていました。
運動場を目いっぱい使って人目につきながら練習するサッカー部やラグビー部の光景を尻目に、だーれも立ち寄るどころか近づきもしないし見られもしない校舎の奥まった片隅の部屋で、多くの学生に『え、柔道部って練習してたの?』とか思われながら人目につかず練習してた、アピール度ゼロなわがK学校柔道部でした。
そしてそれだけでなく、環境も悲惨な所でした。
狭さは一級品
この柔道部で大きな特徴といえたのが、『部室のクオリティ』です。
もちろん低いという意味で。
ここからは、そんな部室の低クオリティっぷりを色んな方面から説明していきます。
まず何より、狭い。
とにかく狭い。
その狭さたるや柔道場しては驚異的で、たぶん全国の中学、高校の柔道部の練習場の中でもトップクラスに狭い練習場だったと思います。
当時正確にサイズを測ったわけでもなく、さらには私自身が卒業して何年もたってしまっているので細かく覚えているわけではないんですが、何度か床下工事だの大掃除だののときに部室の畳を全て出したりした事があり、その時の記憶では部室に敷かれていた畳は確か30〜40枚ほどでした。 正規の試合場でいうならば、おおよそ赤畳の内側の部分と同じ程度の広さって事になりますね。
柔道の試合場というのは、場外ラインを示す赤畳を含めて畳50枚分の広さが基本となっています。
つまりいうなれば、K学校の練習場は、正規の試合場一面分にも満たない広さだったというわけですな。 その面積で10人から15人ほどが一度に練習しなければならないという。
今思い返しても、クソッなんて所だ!と言いたくなるような狭い部室でした。
簡単に図解で説明すると、こんな感じになります。
各部分の詳しい説明は、順を追って説明します。
まさにコンクリートジャングル!
もっとも、単に試合場一面にすら満たないほどの狭さというだけなら、まだ他の学校の柔道部でもありそうな環境だといえます。
しかしK学校の柔道場はそれだけではなく、この畳面積に加えて、四方がコンクリートで囲まれてたという環境だったのが、狭さを更に助長しそして不便さを際立てていたというのが特徴でした。
前述のように、K学校の柔道場は普通の空き部屋に畳を敷いただけという、むりやり柔道部の部室として使いまわしただけの部屋なので、周辺は全てコンクリートの壁になっていました。
ただでさえ通常の試合場に満たない畳面積だってのに、加えて練習場四方にはコンクリートの壁がズオオと立ちふさがっているという。
おかげで、やたら圧迫感があります。
壁のない相撲の土俵よりも金網の壁に囲まれたリングのほうが物理的にも感覚的にえらく狭く見えるものですが、まさにそんな感じといえましょう。
おまけにそれだけでなく、壁のところどころは出っ張りまであるのだからたまらんかったです。
おそらく建物の柱が埋まっている場所だったんでしょう。 練習場の壁は所々に30センチほど、コンクリートの壁が直角にせりあがってる部分がありました。 もちろん、これもまたこの柔道場の狭さを助長する役目として機能していました。
コンクリートの壁がある圧迫感に加え、さらには所々に出っ張りすらあるので、見た目以上に狭く感じさせる。
というか実際狭かったです。
そんな中で練習してたのだから、練習は常に狭さ影響し、乱取りなどはとにかく頻繁に押し合いへし合いな状況でした。
とにかく狭いので、ちょっと移動したり、技をかけて数歩よろめいたりしただけで、もう壁際、出っ張り際。 上手い具合に技がかかっても壁や出っ張りにぶつかりそうだからすぐ止めなければならなかったり、実際にぶつかって仕切りなおしになったりなどは日常茶飯事。 もちろん、乱取りをやってる連中同士がぶつかる事も当たり前。
乱取りの際、壁に足などをぶつけたりする事はしょっちゅうで、たまにそれが原因で怪我する事もありました。 私も手足や背中を壁に強打したことは数え切れないほど経験したし、一度は意識を失うほどしこたま壁に頭を強打した事などもあったものです。 あの時はさすがに死ぬかと思ったなあ。 また、中には足の指を出っ張りの部分に強打して骨折した部員なんかも。
なんとも危険極まりない練習場でした。
出っ張りなどに衝撃吸収用の安全パッドなんかをつければ多少はましになったかもしれませんが、しかし今考えるとこれといった部費すら出ないK学校の部活にそんなものを設置する予算(部費については後述)が出るはずもなく、また壁の大量の湿気(これについても後述)でテープがすぐ剥れてしまうはずなので、仮に安全パッドをつけたところで効果はなかったと思います。
ちなみに他の学校の練習場でも、確かに周辺が壁に囲まれていたりする道場などはあるでしょう。 が、K学校のように狭さと危険度が同時成立していた所はまずないと思います。
実際、私が今まで合同練習や練習試合などで行った事のある他の学校では、どこも練習場は十分な広さだったし、また壁があるといってもあくまで練習場から十分離れた所(つまりきっちり場外に相当する位置)にあったり、壁の下半分は木板壁(コンクリートよりも危険性は低い)で上のほうだけコンクリートの壁になっていたりしたので、まったく問題のない作りになっていました。 ついでに言うと、その広さに加えて壁には危険防止の安全パッドがつけられていたりも。
そんなだから、練習試合や合同練習などで他の学校に出向いた時は、どこを見てもうらやましい環境だなあ、とつくづく思い知らされてたものです。
乱取りは最大6人
とまあそんなやたら狭い上に危険度の高い練習場だったためか、練習内容にもかなりの制限があったものです。
一言でいうなら、広々とした練習が出来なかったと。
中でも一番そのあおりを受けていたのが乱取り(立ち技の実戦練習)でした。
乱取りはいわゆる実践練習のことで、2人一組となって実際の試合さながらにお互い技をかけあい、投げあうという対戦方式の練習です。
で、この乱取りですが、K学校柔道部の練習場では、同時に6人までしか出来ないという状況でした。
打ち込みや寝技などの場合、その場からそう大きく動かずとも行なえるので、一度に大人数でやっても気をつければ何とかなるものでしたが、しかし大きくランダムに動いてお互い技を掛け合う乱取りにおいては、どうがんばっても6人、つまり一度の行なえるのは3組までが限界でした。 4組だとお互いがちょっと動くだけでもすぐぶつかりまくるほどであまりに狭すぎるという。
おかげでこの練習場ではどうしても乱取りがあまりこなせず、どうしても練習量が不足してしまう事が多かったものです。
一度に6人しか出れないので、10名前後の部員数の場合、必然的に一人につき3回に2回くらいの割合でしか乱取りが出来ないという。 例えば乱取りを10本したとしても、実質自分がやれるのは6回か7回くらいで、あとは外側に立って壁守りをしたり時間を計ったりしなければならないわけです。 乱取り15本なら10本くらい。 いうなれば、およそ2本出たら1本抜ける(休む)という形でした。
もちろん、やろうと思えば連続でずっと続ける事も出来ましたが、しかしそれだと自分はいいけど他の人が乱取りに出れなくなるという問題が発生してしまいます。 つまり他の部員の練習の妨げになるという。
練習がしたくて何度も連続で乱取りをやろうとしても、「おまえ出過ぎだから少しひっこめ!」といわれたり、「次は俺が出るんだからどけ!」といって無理矢理乱取りの枠から外されたりするわけです。
練習の時に、乱取りにろくに出ず休み(抜け)すぎて注意されるという場面は他の柔道部でもよく見られそうな光景ですが、しかし乱取りに出すぎで注意されるのってここくらいなんじゃないかと思います。
どんな乱取り環境だ…。
まあ、サボりたい連中からすれば、出たがってるやつに譲って自分はあまりでなくて済むなどなかなかいいシステムだったのは確かですが、しかしマジメに練習したいと思ってる人にとってはどうにも問題ありな環境でした。
実質的に、状況としてはサボりたい連中が抜けまくるのを利用して、練習したい連中が出まくるというので補っていたものです。
なお、乱取り3本中2本出るというのはあくまで平均的な割合であって、練習メンバーが多い時などは、3本に2本どころか、3本に1本くらいしか出来ない事もあったものです。
こうなると、ほとんど軽く流してる程度の練習にしかならないという。 もちろん、そうならないよう、やっと出れた乱取りを目いっぱい全力で取り組むようにはしてましたが。 しかし乱取りの量自体が不足するのは確か。
こういう問題がある場合、一般的には解決策として、乱取りを行なう本数を増やすという方法があります。 しかしながら、部活の練習時間は限られている(長くても午後6時30分までには終了させなければならない)ので、乱取りばかりに時間を使うわけにもいかない。 それに乱取りを多くすればその分打ち込みや寝技、筋トレなどの時間が削られるので、これも根本的な解決にはなりえない。 そもそも乱取りどころか練習場は中学高校が交代で使っている(これについては後述)ので、柔道の練習時間そのものが必然的に少なくなっている。
まさに、狭いという環境ゆえの大きな弊害であったわけです。
ちなみに乱取りに出れるのは6人だけですが、では出てない間は何をするかというと、各人が壁際に立って、乱取り中の人が壁にぶつからないよう防ぐ役をしなきゃなりませんでした。 いわゆる壁守りってやつです。
これは他の学校でもたまに見られた光景ですが、しかしK学校の場合は狭くコンクリート壁が危険なので、本気で壁を守らなければならなかったものです。
例えば乱取りで誰かが勢いよく壁の方に向かってきたら、すかさず壁と乱取りしている人の間に立って、乱捕り中の人が壁に当たらないようクッション代わりにならなければならない。 もちろん、ただ壁に突っ立ってるだけではなく、手を使って安全に押し止めるようにします。 ただ、たまに勢いよく迫ってきたりしたら、手で押しとめきれず、壁守りが乱取りしてる人と壁とでサンドイッチされてしまう、なんて事もありました。 ひどい時には、窓ガラスに突っ込んでしまう事も。
そして練習場が狭いので、乱取り中に壁際に迫ってくる事は非常に多く、何度も何度も必死こいて壁から守ってやらねばならない。 偶然連続で壁と乱取り人たちに挟まれまくったりすると、『自分に何かうらみでもあるのか!?』と思ってしまいそうになります。
また、ひどい時には中にはコレで怪我してしまう事も。 というか実際に怪我した人もいました。
だからそうならないよう、壁を守る際には十分気をつけて、そして気を使わねばならなかったという。
もちろん、壁際で守る人だけでなく、乱取りをやる本人達も壁に気を使って出来る限り内側の方でやろうとしなければならなかったものです。
ここで連携技だ!と思っても、移動先が壁に近かったら止められるので止めたり。
このように。乱取りは基本的に一度に6人が行ない、そしてそれ以外の人は壁際で乱取りしている人がぶつからないよう守るというのが基本スタイルだったわけですが、しかし人数が少ない場合もこの壁守り役は必要だったので、その際には意図的に乱取りの人数を減らす必要がありました。
例えば通常は一度に6人で乱取りするはずなのに、練習してる人が6人しかいない場合は、2人を壁守り役にしなければならないので、一度に乱取りする人数を4人に減らすなど。 また4人しかいない場合は2人だけでやる。
人が多いときは同時に乱取りできる人数が少ない事(これについては後述)が問題になり、人が少ない場合は少ないで壁守り役がいなくなるためこれまた同時に乱取りできる人数がさらに減るので問題になるという。
どうあがいても満足に練習できるとはいえない、まったく持って変な環境の練習場でした。
…続く。